金沢大学大学院医学系研究科 臨床研究開発 補完代替医療学講座

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目次

<<活用編>>

1.はじめに
2.補完代替医療とは
3.補完代替医療に対する心構え
4.補完代替医療に関心があるとき確認すべきこと
5.補完代替医療を利用するまえに確認すべきこと
6.補完代替医療に関する情報の集め方と注意点
7.補完代替医療(特に健康補助食品・サプリメント)を利用する際の注意点

<<資料編>>

1.補完代替医療を取り巻く世界と日本の現状とその社会的背景

2.補完代替医療の科学検証

 1).科学的検証とは

 2).サプリメントを検証する

 3).補完代替医療を利用する際の注意点(追加)

参考にした資料

 
補完代替医療 サプリメントを検証する
 

つぎに、前述しました厚生労働省研究班の調査結果にて、わが国のがん患者において利用頻度の高かった健康補助食品・サプリメント(資料編2ページを参照)について科学的検証が、どこまで行われているか文献調査しました。

(その他にもさまざまな補完代替医療が利用されていますが、今回はわが国のがん患者に利用頻度が高かった健康補助食品・サプリメントを取り上げます)今回、「PubMed」という米国国立衛生研究所(NIH)の国立医学図書館(National Library of Medicine)が提供しているデータベースを用いて文献検索を行いました。なお今回利用した「PubMed」は、掲載情報はすべて英語ですが、以下のURLから、どなたでも無料でアクセスできます。
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/entrez/query.fcgi?db=PubMed

また、文献検索にあたっては、前述の科学的検証方法のうち、ヒトを対象にしたもののみを取り上げました。おもにランダム化(無作為化)比較試験などの臨床(介入)試験や、コホート研究などの観察試験を中心に検索を行いました。比較試験やコホート研究が行われていない健康補助食品・サプリメントに関しては、症例報告なども参考として取り上げました。

なお、文献検索は、2005年9月に行いました。

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【アガリクス】

アガリクス茸は、学名をアガリクス・ブラゼイ・ムリル(Agaricus blazei Murill)、和名はカワリハラタケ(慣用名;アガリクスまたはヒメマツタケ)という担子菌類ハラタケ科のキノコです。原産地は、ブラジルとされていますが、北米(南カロライナ〜フロリダ州)の海岸草地にも自生しています。日本には、1965年に食用キノコとして持ち込まれましたが、ほかのキノコに比べ粗タンパク質が43%と多く(その他、多糖類、ビタミンB2、ビタミンD、マグネシウム、カリウムなども多く含みます)腐敗が早いため、食用キノコとして普及しませんでした。しかし、1980年に三重大学医学部の伊藤均らがヒメマツタケ(アガリクス)の抗腫瘍活性を報告してから抗がん効果に期待が寄せられ、わが国において精力的に研究が進められています。アガリクス茸の抗がん効果(抗腫瘍活性、免疫賦活作用)の有効成分として、β-グルカンや低分子分画のABMK-22などが知られています。また具体的な免疫賦活作用としてはマクロファージ・NK細胞の活性化、樹状細胞の活性化および成熟化誘導等が報告されていますが、いずれも培養細胞・実験動物での研究報告です。

では、ヒトでの科学的検証は、どうなのでしょうか。検索の結果、ひとつのランダム化(無作為化)比較試験(アガリクス v.s. プラセボ)が、行われていました。子宮がん、卵巣がんの患者を対象にした調査で、化学療法中の副作用(食欲、脱毛、情動安定性、全身脱力感)を軽減する効果について有効性を認めたと報告されていますが、今後、複数の試験による検証が必要です。

  検索キーワード;Agaricus blazei Murill、Human
  検索結果;全4件
  内訳;臨床試験1件、症例報告0件、実験室の研究など3件

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【プロポリス】

日本プロポリス協議会ではプロポリスを次のように定義しています。「プロポリスとは、ミツバチが樹木の特定部位、主として新芽や蕾および樹皮から採集したガム質、樹液、植物色素系の物質および香油などの集合体に、ミツバチ自身の分泌物、蜂ろうなどを混合してつくられた暗緑色や褐色から暗褐色を呈した粘着性のある樹脂状の固形天然物である」従って、プロポリスは、植物由来の複合物であるため地域ごとに起源植物が異なることから、その産地によってプロポリスの成分内容の比率が異なっていることが指摘されています。さらに、含有成分に関しても報告例だけで300種類以上あるといわれています。また、プロポリスの作用に関しては機能性食品素材便覧によると、プロポリスは「薬として用いられた歴史は古く紀元前350年にさかのぼる。ギリシャ人は膿瘍に、アッシリア人は傷や腫瘍の治癒にプロポリスを用いていた。現在でも外用では、消毒や抗菌をおもな目的に、経口では、結核などの各種感染症、十二指腸潰瘍などの消化器疾患に対して用いられ、免疫賦活効果も期待されている。しかし、外用以外の効果については科学的実証が十分ではない」と記載されています。

では、ヒトでの科学的検証は、どうなのでしょうか。検索の結果、プロポリスのがんへの直接的治療効果(がんの縮小や延命効果)、抗がん剤や放射線治療の副作用軽減効果などを臨床試験で検証した報告はありませんでした。

  検索キーワード;propolis、cancer、Human
  検索結果;全34件
  内訳;臨床試験0件、症例報告0件、実験室の研究など31件
(※内容が日本語、英語以外の言語で記載されていたため詳細の不明なものが、3件ありました)

 

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【AHCC(エー・エイチ・シー・シー)】

AHCC(Active Hexose Correlated Compound)は、「担子菌類の菌糸体を液体タンクで培養し、各種酵素処理、熱水抽出して得られた活性化糖類混合物の総称」とされています。有効とされている成分は、β-グルカンとアセチル化α-グルカンとされていて、免疫賦活作用、抗腫瘍作用等が培養細胞実験、動物実験にて確認されています。

では、ヒトでの科学的検証は、どうなのでしょうか。検索の結果、根治手術後の肝細胞がん患者を対象とした非ランダム化(非無作為化)比較試験が、ひとつ報告されていました。その研究報告では、AHCC摂取によって手術後の再発予防効果、生存率の延長効果を認めたとされています。今後、さらに複数の臨床試験による検証が求められます。

  検索キーワード;Active hexose correlated compound、Human
  検索結果;全2件
  内訳;臨床試験1件、症例報告0件、実験室の研究など1件

 

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【サメ軟骨】

サメ軟骨は、創傷治癒促進のため、そして非腫瘍性の慢性炎症性疾患の治療のため、1950年代から使われてきました。抗腫瘍活性としては動物実験や前臨床試験などから、直接の細胞傷害作用、免疫系の賦活作用、血管新生の阻害作用の3つが考えられています。サメ軟骨は、米国において複数のヒト臨床試験が行われている(進行中も含む)素材です。

では、ヒトでの科学的検証は、どうなのでしょうか。検索の結果、3件の臨床試験の報告がありました。ひとつは、進行がんの治療におけるサメ軟骨の安全性と有効性を調べるために60人の進行がん患者(脳腫瘍;1名、乳がん;18名、大腸がん;16名、肺がん;14名、リンフォーマ;3名、前立腺がん;8名)を対象に行われたものでした。有効性に関しては、評価可能な症例50例中10例に12週間以上の病状安定を認めましたが、腫瘍が小さくなったり消失したりした症例は1例もありませんでした。安全性に関しては、有害事象が21件認められ、そのうち14件が消化器症状(悪心、嘔吐、便秘など)でした。その論文の著者らは、「サメ軟骨は単独で使用した場合、抗腫瘍効果は認められず、生活の質(QOL)に関してもプラスにならない」と結論づけています。

もう一つは、腎細胞がん患者22名を対象に、60ml/日投与群と240ml/日投与群で生存率の比較検討を行っています。その結果、240ml/日投与群の方が生存期間が延長されました。その論文の著者らは、「サメ軟骨(Neovastat)は、腎細胞がん患者において、高用量(240ml/day)内服によって、生存予後に関して利益をもたらす可能性がある」と結論づけています。

もう一つは、乳がん、大腸がんの患者を対象に行われたランダム化(無作為化)比較試験です。抗がん剤などの標準治療を行う際に、サメ軟骨併用群(42名)とプラセボ併用群(41名)に無作為に振り分け、生存率と生活の質(QOL)の比較検討を行いました。その結果、サメ軟骨(Benefin)の有効性を認めるような結果を得ることはできませんでした。その論文の著者らは、「サメ軟骨(Benefin)は、進行がん(乳がん・大腸がん)患者において有効性は示唆されなかった」と結論づけています。

サメ軟骨は、ほかの健康補助食品・サプリメントと比べて臨床試験が比較的数多く実施されています。しかし、がん患者への有効性は明白でなく、現時点では科学的根拠(エビデンス=臨床試験による結果)の集積段階といえます。

   検索キーワード;shark cartilage、cancer、clinical trial、Human
  検索結果;全4件
  内訳;臨床試験3件、その他1件

 

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【メシマコブ】

メシマコブは桑の木に寄生するキノコで、栽培が困難であるため天然の姿品(キノコ)を確保することは、難しいとされています。しかし、近年、韓国でメシマコブの菌糸培養が成功し、その多糖類成分の免疫増強効果の研究が精力的に行われるようになりました。1993年にはメシマコブ菌糸体は、免疫機能増強剤として韓国で医薬品として認可されています。その韓国において医薬品としての副作用の報告例はありませんが、医薬品の注意事項に「ごくまれに吐き気、食欲不振、下痢、胃部不快感などの症状が表れることがある」と記載があります。

では、ヒトでの科学的検証は、どうなのでしょうか。検索の結果、症例報告が、2件(肝細胞がん;1症例、前立腺がん;1症例)ありました。それら内容は、メシマコブの抗腫瘍効果の可能性について言及されているものの、前述したとおり症例報告は結果の信頼性が低く、この報告結果の解釈には冷静な判断が必要と思われます。

  検索キーワード;Phellinus linteus、Human
  検索結果;全9件
  内訳;臨床試験0件、症例報告2件、実験室の研究など7件

 

【まとめ】

近年、医療界に広まっている科学的根拠に基づく医療(エビデンス・ベイスド・メディシン;EBM)に応じるかたちで、がん患者が利用している代表的な健康補助食品・サプリメントについて、限られた条件のもとではありますが文献検索を行いました。その結果、多くのがん患者が補完代替医療に期待していたがんに対する直接的な治療効果(がんの縮小、延命効果など)を証明するような報告はほとんどありませんでした。

今後、よく計画されたヒト臨床試験によるエビデンス(科学的根拠)が蓄積され、多くの不確かなことが補完代替医療の名のもと,漫然と継続されることなく、順次、有効・無効、有害・無害が明らかにされていくことと思われます。

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