 |
手の外科グループは主に、肘より遠位の疾患に対する治療を行っています。対象となるのは、骨折、手指の切断、腱・靭帯損傷などの外傷、手根管症候群や肘部管症候群などの絞扼性神経障害、骨折後の偽関節や変形などがあります。また、腫瘍切除後などの組織欠損に対してマイクロサージャリーの技術を駆使し、皮膚や骨の移植術を行っています。どの疾患においても、骨、腱、靭帯、神経、血管が複雑に関係しており、解剖や機能を熟知した上での専門的な治療が必要な領域です。
|
 |
◆髄内セメント固定法 |
|
骨粗鬆症を有する高齢者が転倒し手をついて受傷する橈骨遠位端骨折は頻度の高い外傷です。関節近傍の骨折であることから、しっかりとした固定と早期からのリハビリが重要といわれています。われわれは、この骨折に対し髄内セメント固定法をおこなっています。手術では、骨折部を整復した後、髄腔に生体用セメントを充填し固定します。術直後より強固な固定性が得られるので、患者さんは簡単なサポーターをつけて早期からリハビリが行えます。抜糸をするころにはコップなどの軽い物の保持が可能で、早期から有用肢として使用できます。
|
 ▲術前 |
 ▲セメント固定後 |
◆プレート固定法 |
骨粗鬆症がなく、関節内に骨折が及んでいる症例などでは、正確な整復と強固な内固定が必要とされます。
当科では、術前にCTスキャン、3D−CTで骨折の形状を正確に評価し術前計画を行っています。
固定に使用する器械は、主にAOの「Locking DRP」を使用しています。これはスクリューとプレートが一体化する工夫がしてあり、骨折部において、より強固な固定力が得られます。加えて3種類のプレートがあることから、骨折の形状に応じて使い分けることが可能となっています。
|
 ▲術前3D-CT |
 ▲術後レントゲン |
 |
手根管症候群は手根管内で種々の原因により正中神経が圧迫されて起こる絞扼性神経障害です。保存的治療にもかかわらず痺れや疼痛の強い症例、筋萎縮を伴う症例に対しては手術的治療が必要となることがあります。従来より、横手根靭帯を切離して手根管を開放する方法が確立されていますが、近年、手掌部小皮切法や鏡視下開放術が開発され、優れた成績をあげています。当科では手掌部の約2cmの皮切から、横手根靭帯を選択的に開放する、小皮切法を行っています。直視下に確実に神経の開放が行え、また、皮下の神経を痛めないことから、術後、手掌部の痛みが少ないといった利点があります。
|
 ▲手根管症候群で使用している工夫された器械
(左が横靱帯を安全に切るためのハサミ、右が小さい創から術野を見やすくする筋鈎)
|
 ▲手の末梢側から横靱帯を除いた写真 |
 |
肘部管症候群とは尺骨神経が肘関節の部分で何らかの原因で圧迫され、小指や環指のしびれや変形・握力の低下などの症状が出現する病態です。肘部管症候群に対する手術として、弓状靱帯切離術、内側上顆切除術、尺骨神経皮下移行、尺骨神経筋層下移行などが行なわれています。変形性肘関節症に起因する場合、尺骨神経溝に生じた骨棘と弓状靱帯の間で尺骨神経が挟み込まれて症状が生じます。この病態に対し、私たちは骨棘の切除と尺骨神経溝を深く形成する肘部管形成術を行なっています。この方法は、肘関節の可動に伴う尺骨神経に加わる張力が小さいこと、栄養血管が温存されて神経回復に有利なことが大きな利点です。筋肉や靱帯に対する操作を加えないため、筋力低下や関節の不安定性を生じないことから早期社会復帰も可能です。
|
 ▲長期の尺骨神経の圧迫により、 右手の骨間筋は左手と比較して萎縮している。 |
 ▲圧迫されていた尺骨神経 圧迫された部位より遠位が膨らんで偽性神経腫を認めている。 |
 |
舟状骨は、手関節の遠位にある手根骨の一つです。その骨折は手根骨の骨折の中では、最も頻度の多い骨折であり、また遷延治癒骨折や偽関節になりやすいことが特徴です。偽関節を生じた場合、今までは骨移植が必要とされていましたが、当科では強力な内固定スクリューを使用することで、症例によっては小侵襲手術で良好な成績をあげています。
|
 ▲受傷後3か月の舟状骨骨折偽関節 |
 ▲術直後 |
 ▲術後6か月 |
 |
遠位指節間関節の背側での骨折や腱損傷により引き起こされる手指の変形です。当科では原因となる骨折に対して、石黒法を用いて正確な整復と骨接合を行っています。
|
 ▲術前 伸筋腱付着部が骨折している |
 ▲術直後 2本の鋼線を用いて整復固定 |
 ▲抜釘後 骨癒合完成している |
 |
中年以上の男性に好発する手掌部の線維束の索状拘縮です。通常は手掌部尺側からはじまります。原因は糖尿病などの代謝性疾患、高血圧症脳脊髄神経障害等があげられますが、必ずしも明らかではありません。拘縮が進行するものでは外科的処置が必要となります。
|
 ▲術前 小指に強い屈曲拘縮をきたしている |
 ▲術後2か月 手掌腱膜切除により症状は改善した |