心筋SPECT再構成法


SPECTの原データは,多方向への投影データから成り立っている.このデータを断面に再構成する方法として,現在主流となっているのはフィルタ逆投影(filtered back projection, FBP)による方法である.また,近年,最尤推定期待値最大化法(Maximum likelihood expectation maximization, MLEM)およびそれを高速化した,サブセット化による期待値最大化法(ordered subset expectation maximization,OSEMも用いられるようになってきた.

FBP法 体内にある放射能の集積部位は各方向に投影され,投影平面像として通常60-90枚即ち4-6゜毎の画像が得られる.この投影データを逆に断面上の画素に戻して書き込むことが逆投影の原理である.原理的には360゜のデータを必要とするが,心筋では180゜データからの再構成法も用いられる.放射性の線源があった場所は,逆投影で繰り返し書き込まれるため,より高いカウントとして記録される.しかし,単に逆投影しただけでは,放射状の濃度が周辺にも生じ,さらに集積部に星状のアーチファクトができる.そこでフィルタをかけると,逆投影される値の両側に小さな負の値を導入することで値がキャンセルしあい,真の値に近い像を得ることができる.逆投影に用いられる代表的フィルタがrampフィルタであり,画像のノイズを減少させるために,同時にあるいは前処理として用いられるのがButterworth, Hannなどの平滑化フィルタである.

MLEM法あるいはOSEM法 この方法は投影データの結果が与えられているので,その元になった集積分布を確率論的に最も確からしいように推定する手法である.MLEM,OSEM法とも再構成像から計算された投影像と実際の投影像が一致するように繰り返し補正する逐次近似法の一種と考えることができる.
 FBP法では,例えば胆嚢に高集積があるような場合を想定すると,再構成フィルタの影響で同一面上にある心筋にアーチファクト(いわゆるstreak artifact)が出現しやすいが,MLEM/OSEM法では,その影響を小さく押さえることができる(図).また,低カウント領域での信号/雑音比の減少や,減弱・散乱補正との併用により定量性の改善の面でも効果が期待できる.しかしながら,MLEM法は計算速度が遅く,実験的には可能でも臨床では実際的ではなかった.そこでOSEM法では繰り返し回数を減らすためにいくつかのグループすなわちサブセットに分けて処理を行い収束を早めている.適切なサブセット数や繰り返し回数を設定すれば,実用の範囲で利用可能である.まだFBP法ほど高速でないためゲートSPECTへの応用を考えるとさらなる高速化が望まれる.
(図:左より投影像,FBPおよびOSEMによる水平長軸断層像)

金沢大学核医学科 中嶋憲一