One-Point Lecture on Nuclear Cardiology

Tl-201による心筋血流評価と心筋生存性評価

Tl-201は心臓核医学の中で定着しており、その評価も大凡定まっている検査法です。また、あらゆる種類の薬剤がまずは血流にのって心筋に到達するという生理学的意味からも、常に基準となるのは血流であると言って良いでしょう。通常、運動または薬剤による負荷を行ない、心筋血流の安静時との比較により、冠血流の予備能を評価できます。

Tl-201の動態と心筋血流血流評価

Tl-201は1価の陽イオンとして、K-43やRb-81と生理学的に類似の挙動を示します。静注後の初期のTl-201集積は心筋の局所血流に比例し、心筋抽出率(すなわち冠動脈に注入されたトレーサーが1回の通過で心筋に取り込まれる割合)は85-90%と高値です。Tl-201の細胞取り込みは、基本的には血流に比例するものと考えてることができます。早期にはその集積を保ちますが、時間の経過とともに心筋から洗い出され、運動後では4時間で40-50%ほど減少します。

Tl-201の再分布現象

「再分布」の定義は、初期像と後期像の比較に基づいてなされており、初期の相対的血流低下が時間と共に回復する所見をさしています。Viable(生存可能性があること)な心筋であれば、負荷時の一時的な血流低下はあっても、数時間後には心筋細胞内外のTl-201が平衡状態に達するため、集積回復の所見として観察されます。3-5時間後の早期再分布は、古典的な一過性虚血、すなわち心筋生存を示す所見です。また高度の冠動脈狭窄にしばしば見られるび漫性の洗い出し遅延(diffuse slow washout)も、多枝病変の検出には有用な情報となります。

Tl-201再静注法

再静注によるviability評価の改善法も、最近良く用いられるようになっています。一般に後期像の撮像後に、少量のTl-201を追加静注し改めてSPECT撮像します。私たちの施設では、74MBqのTl-201を用いて負荷SPECT検査を施行した後、直ちに37MBqを追加静注し、約3時間後に再静注後の再分布像を撮るようにしています。この方法は、安静時の画像を負荷後再分布画像に重ねることになりますが、実際の機序としては、血中のTl-201濃度をあげることにより、再分布を促進させる効果があります。再静注法では後期像の欠損部位で30-40%の症例にfill-inがあることが示されてきました。

Tl-201の24時間再分布

3-4時間の早期再分布による生存可能性(viability)の判定基準により、「生存可能性なし」と判定された患者の相当数が、血行再建により機能が回復することが示されてきました。このような観点から、さらに遅い24時間像で、真の平衡状態に近い心筋のTl-201分布を見ることにより、生存可能性判定の改善が図られてきました。すなわち24時間で再分布する領域は、「生存可能性あり」と考えることができます。この24時間再分布の頻度は、報告によりその割合に差はありますが、通常の負荷および後期像で固定性欠損と判定された症例のうちおよそ20-40%とされています。

Tl-201の安静再分布

安静時の再分布イメージングが、慢性の虚血や高度の虚血に有用です。この所見も上記のTl-201動態から見ると、早期の取り込みの低下と洗い出しの遅延に伴う所見と考えられます。このような領域は組織壊死すなわち梗塞には陥っていないが虚血が持続するため、壁運動低下もしばしば認められ、いわゆるhibernating myocardium(冬眠心筋)の状態を示す症例がこの中には含まれています。現状ではシングルフォトン核種を用いた検討では、この安静時Tl-201の再分布撮像が最も生存可能性を反映する方法と言えるでしょう。

F-18 FDG-PETによる生存性評価

ポジトロンエミッション断層(PET)を用いた検査では、血流低下部において、空腹時にF-18 フルオロデオキシグルコース(FDG)の心筋取り込みが認められるミスマッチを示す時に、「生存性あり」とみなされ、当面最も信頼できるviabilityの示標となっています。心筋の絶え間ない収縮にはアデノシン三リン酸(ATP)産生が不可欠ですが、心筋には多数のミトコンドリアが存在しており、基本的には常に好気的な酸化によりその活動が維持されています。通常、心筋のエネルギー源は主として遊離脂肪酸とブドウ糖ですが、虚血状態では健常心筋で70-80%を占めていた脂肪酸代謝が抑制され、解糖系に依存するようになり、さらに虚血が高度になると嫌気性解糖系が主としてエネルギー産生にあずかることになります。このような意味で、血流低下部でのFDG取り込みは、心筋が依然生存している根拠となっています。

SPECTの定量法による生存性評価

血流低下の程度の定量化により、すなわち心筋のピークカウントの約50%を境界としてviabilityを予測する試みがなされてきました。この方法はある程度の成功を治めていますが、一方では血流低下の程度とFDGによる集積が直ちに対応しないことも指摘されています。また、Tc-99m MIBIを用いた心筋血流の定量と生存可能性(viability)の関連でも、心筋ピークカウントの約50-60%が生存性のの境界になるという報告がある一方で、FDG取り込みから見た生存性との間には中間段階や重なりがかなり見られると言う報告もなされています。現状では、PETの代謝イメージングと比較して、血流製剤による定量化では、生存可能性のある程度の過小評価はどうしても避けられません。しかし、この定量法は簡便で、全ての核医学施設で可能な実際的方法といえます。


お問い合わせは E-mail: Nakajima K nakajima@med.kanazawa-u.ac.jp

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