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北陸画像診断支援センター

 

 

 

外傷性甲状腺損傷

乗用車にて川へ転落した際、受傷。

《外傷性甲状腺損傷》
前頚部の外傷では血管、気管、食道、甲状腺などの合併損傷が多く、受傷直後にバイタルサインが良好でも、皮下気腫や血腫などにより気管が圧排され急激な気道狭窄をきたす可能性がある。
甲状腺は内臓筋膜に包まれており,少量の血腫でも気管が圧排されうる。

損傷範囲が大きい場合には甲状腺全摘が必要になることもある。

甲状腺出血による呼吸困難の発症時期は,受傷後およそ60分〜24時間以内との報告がある。

そのため,頚部の外傷後はたとえ表面的な外傷を認めなくとも、24時間程度は厳重に経過観察する必要がある。

《甲状腺中毒症状》
外傷性甲状腺損傷では、組織破壊により貯蔵ホルモンが漏出すると甲状腺中毒症状(発熱、下痢、動悸・頻脈、手指振戦、発汗過多など)をきたすことがある。
特にBasedow病などの基礎疾患を有する場合、外傷を契機に甲状腺クリーゼをおこしショックに至るケースもある。
頚部損傷がある場合には、気道狭窄のみならずこれらの症状にも注意 して経過をみる必要がある。

(2008.11.24 前期臨床研修医 M. H記)

急性期脳梗塞の画像診断 for 研修医

 急性期脳梗塞の画像診断において、最も重要なことは、t-PA静注療法の適応を迅速に判断することである。t-PA静注療法の適応は発症3時間以内の虚血性脳血管障害に限られており、脳出血の除外、出血性梗塞の危険性が高い症例の除外、が画像診断において重要である。

CT

* Early CT sign

1988年にTomuraらが提唱した所見である。その後、MRI拡散強調像が登場したため、あまり重要視されていなかったが、t-PA療法の拡がりと共に再認識されてきた。

Early CT signは病理学的には、細胞傷害性浮腫に伴う脳実質のX線吸収のわずかな低下と軽度の腫脹を表すものである。おおむね、発症後2~3時間で陽性となるとされている。Early CT signが認められる部分は、原則として不可逆性変化と考える。

Early CT signは、脳実質の所見、脳血管の所見の2種類に分けられる。

 

脳実質の所見

  • レンズ核の不明瞭化

レンズ核の構造の輪郭が不明瞭に、一部は欠損することがある。発症1~2時間程度で高率に認められるようになる。レンズ核線条体動脈は側副血行の無い終末領域を灌流しているため、この領域は虚血に対して極めて脆弱であり、そのため本所見が最初に出現する。

  • 島皮質の不明瞭化

島皮質のCT値が低下、insular ribbonと呼ばれる部分(前障、外包、最外包)が不明瞭となる。この部分は他の部分と比して、頭蓋骨のartifactが少なく観察しやすい場所である。

  • 皮髄境界の不明瞭化

皮質(灰白質)のCT値が低下し、白質との濃度差が小さくなり、皮質と髄質の境界が不明瞭になる。発症から2~3時間程度で認められることが多い。本所見を広範囲に認める時は、予後不良のことが多い。

  • 脳溝の消失

虚血領域の脳溝が脳の腫脹によって不明瞭化する。皮質CT値の低下を伴い、発症後3時間以降に出現することが多い。

・ 皮質吸収値低下を伴わない脳浮腫

上記、脳溝の消失の中で、皮質CT値が低下していないものを指す。組織障害の程度は軽く、乏血領域やペナンンブラ領域に相当すると考えられている。

 

脳血管の所見

・ 血栓化した中大脳動脈水平部が高吸収に認められる、中大脳動脈高吸収所見(hyperdense MCA sign,

Sylvius裂内の動脈枝の断面が高吸収に認められるMCA dot signが挙げられる。本所見は、発症後数日以内に消失する一過性の現象であり、脳実質のearly CT signsより先行して認められる。発生頻度は22-55%、中大脳動脈閉塞の27-69%に出現し、感度は低いが特異度は高い(85-100%)。中大脳動脈の石灰化との区別を慎重に行う必要がある。

 

 

CTにおける梗塞巣の経時的変化】

1.超急性期

発症6時間以内には塞栓性梗塞でearly CT signsを呈する

AHyperdense MCA sign:発症直後より

B)レンズ核の不明瞭化:発症後12時間

C)島皮質・皮髄境界の不明瞭化、淡い低吸収域:発症後23時間

D)脳溝の狭小化:発症後3時間以降

発症6時間〜24時間後より明らかな低吸収域として描出。造影効果は認められない。

2.72時間前後

急性期では最も梗塞巣が良好に描出される。脳浮腫もピークとなる。

3.亜急性期

2-4週間後〜2ヶ月後。

Fogging Effectによって灰白質(皮質と基底核)を中心に梗塞巣が不明瞭になる。造影CTにてFogging Effectと一致する造影効果を認める。

* Fogging Effect

脳梗塞の亜急性期(発症1週間後〜1ヶ月後程度)に、灰白質を中心にdensityの上昇を認め、梗塞巣が見えにくく、もしくは、全く見えなくなる現象を指す。灰白質を中心に血管増生や細胞浸潤が起こるためと言われている。造影剤による亜急性期の造影効果は、Fogging Effectの分布と時期が一致する。

4.慢性期

12ヶ月以上。

梗塞巣は境界明瞭な低吸収域として描出される。造影効果は認めない。

組織壊死が進み、軟化吸収、瘢痕化、嚢胞形成が起こる。梗塞周囲の脳溝開大と脳室拡大が起こる。

5.長期経過

梗塞側の大脳脚・橋底部の萎縮:Waller変性

対側小脳の萎縮:Crossed cerebellar diaschisis

 

【MRI】

拡散強調MRI

拡散強調MRIは、現在、汎用されている画像検査の中で最も早期に梗塞巣を捉えることができる。

梗塞巣では細胞性浮腫が起こり、その結果、梗塞巣の拡散係数(apparent diffusion coefficientADC)が低下し、拡散強調MRIにて高信号を呈する。しかし、拡散強調像は組織T2値の影響を受ける(T2 shine-through)ため、拡散強調像の高信号が真のADC低下によるものかの判断には、拡散係数画像(ADC map)を作成し、低信号を確認する。

 

FLAIR

FLAIRにおいて、血流が低下した脳表クモ膜下腔の動脈枝が高信号に描出される所見(intraarterial signal)は閉塞血管の範囲を知る上で重要である。これは、フローボイドの低下した血管が相対的に高輝度にみえるためである。

 

【参考文献】

1. 橋本洋一郎/平野照之, 脳梗塞:急性期の画像診断 CT, 神経内科, 58(Suppl.3), 147-158, 2003

2. 百島祐貴, 脳梗塞:急性期の画像診断 MRI, 神経内科, 58(Suppl.3), 159-165, 2003

3. 百島祐貴, 急性期脳卒中の画像診断, Pro. Med. , 27:269-272, 2007

4. 平野照之, 急性期脳梗塞の頭部単純CT・拡散強調画像, 分子脳血管病, vol.7, no.1, 78-85, 2008

5. 平野透, 頭部疾患における画像所見と撮影法(CT編), 日本放射線技術学会雑誌, 61, 3, 319-334, 2005

【症例】

60歳代男性

主訴:左半身の脱力。発症4時間20分後にCT施行、その28分後にMRI施行。

 

(頭部CT):発症より約4時間20分経過

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(頭部MRI)発症より約4時間50分経過

 

 

 

 

 

 

 

 

右内包後脚にdiffusionで高信号を認め、ADC mapで低信号を認める。右内包後脚の新鮮梗塞巣と判断した。

(2008.10.19 臨床研修医 A.A記)

胆管内乳頭状腫瘍 intraductal papillary neoplasm of bile duct (IPNB)

IPNB:肝内外の胆管内腔で胆管被覆上皮が乳頭状に発育し、しばしば 粘液過剰産生や胆管拡張を示す腫瘍として以下があげられる。

胆管内発育型胆管癌

胆管乳頭腫(症)

粘液産生腫瘍

胆管腔と交通を示す胆管嚢胞腺腫/腺癌

これらの腫瘍は膵のIPMNに類似ししており、 本学、中沼、全らは胆管内乳頭状腫瘍(IPNB)と提唱した。

IPNBは肝外胆管、肝門部胆管、左右肝管、肝内大型胆管に発生し、低悪性度癌を示す。

さらに進行胆管癌の中にも高度に浸 潤したIPNBが含まれている可能性がある。

IPNBの鑑別として以下が考えられる。

乳頭状腺癌成分を伴う胆管癌

胆管性嚢胞腫瘍(胆管性粘液嚢胞腺腫/粘液嚢胞腺癌)・・・ 嚢胞壁に卵巣間質様の間質成分あり、エストロゲンレセプタ、 プロゲステロンレセプタの発現あり。

結腸癌の肝内転移

末梢型肝内胆管癌の2次性の胆管内発育(cancerization)

参考文献

中沼安二、全陽、板津慶太. IPNB -新しい疾患概念の提唱とそ の病理学的スペクトラム-. 胆道 21巻1号 45-54(2007)

(2008.8.18 井上、小坂 記)

虚血性偽小葉壊死 anoxic pseudolobular necrosis


下血後に多発HCCsの血行動態の変化(乏血性になった)を見た症例があった。

肝細胞癌自己壊死との関連も考慮すべき症例であるが、通常硬変肝に見られる、虚血性偽小葉壊死が朝話題になった。

1957年Edmondsonが進行した硬変肝における数個の偽小葉にまたがり、特に小葉中心に起こる凝固壊死を報告し、虚血性偽小葉壊死(anoxic pseudolobular necrosis)と名づけた。

このような病態にはほとんど消化管大量出血、ショックや糖尿病性ケトアシドーシスなどの既往歴が見られ、近年では繰り返す肝塞栓術もその一員となる可能性がある。

CT:非造影CTでは不明瞭〜低、造影CTでも不明瞭〜低
CTAP:defect
MRI:T1高、T2高


参考文献:Fukui N, Kitagawa K, Matsui O, et al.
Focal ischemic necrosis of the liver associated with cirrhosis: radiologic findings.AJR Am J Roentgenol. 1992 Nov;159(5):1021-2.

カルチコールの組織内石灰沈着

【症例】

依頼文:生後15日の男児。 体重チェックに来院したが右下腿に3cm大の硬結を認める。

昨日は皮膚に刺し口のようなものがあったと。 熱感発赤なし。 骨のように固いため何由来か評価お願いします。

初診時X-p

2ヶ月後X-p

【考察】

新生児および乳幼児で,グルコン酸カルシウムの皮下注および静注時の血管外漏出により,注射部位周辺に組織内石灰沈着症を生じたとの報告がある.

特に新生児および乳幼児では,成人に比較して血中無機リンの比率が高い(小児:4〜7mg/dL,成人:2.4〜4.5mg/dL)ため,石灰沈着を生じやすいと考えられている.

カルチコール注射剤の適応が低カルシウム血症に起因するテタニー症状の改善であること,また,テタニー症の好発年齢が新生児期や乳幼児期であることから,石灰沈着の報告は新生児に多く,成人ではまれである.
しかし,成人でも血管外漏出により石灰沈着を起こしたとの文献報告[26]があるため,成人への投与時にも注意する.

[発症機序]
この組織内石灰沈着は,注射針の刺入という軽微な組織損傷部位に一過性の高カルシウム血症が存在すると,まず微量のリン酸カルシウムの結晶が形成されて,カルシウム血中濃度が正常化してもこれを核として石灰沈着が増大すると考えられている.


[危険因子]
・重篤な腎不全患者では,カルシウム代謝障害により石灰沈着が起こりやすいといわれている.
・活性型ビタミンDには,腸管からのカルシウム吸収増加作用があり,高カルシウム血症があらわれやすいため,石灰沈着を増悪する可能性がある.
・高リン酸血症の患者では,カルシウムがリン酸塩として沈着しやすいため,石灰沈着がおこりやすいといわれている.

[転帰]
石灰沈着は通常1〜3カ月で消失する.しかし,硬結した部位に膿瘍を生じた切開術を必要とする場合もあるため,注射時の血管外漏出には注意が必要である.

[処置法]
カルチコール注射液として特異的な対処法はない.以下のような一般的な保存療法を行う.
注射を中止抜去し,患部の安静挙上,局部の保存的治療と全身状態の改善などがある.
末梢循環を良好にするのが浮腫の吸収などに大切である.例えば患部には消毒,リバノール湿布, ソフラチュールガーゼ貼布抗生剤軟膏塗布を行う.
患部皮膚に絆創膏を直接貼らないこと,ガーゼを頻回に交換すること,ストッキネットで患肢を牽引挙上することなどが推奨されている.

よく行われている温湿布については,末梢循環状態が良ければよいが,良くない場合熱により局部組織の代謝が亢進し,酸素などの消耗が高くなり壊死になりやすいと考えられ,条件によっては行わない方がよい.

また,動物実験(ウサギ)において,トリアムシノロンアセトニド(10mg/dL) 0.5cc の注入により改善されたとの報告がある.

本症例はカルチコール注射の既往がわかり、保存的加療で結節の消退が確認された。

(2008.8.31 油野 記)


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