金沢大学ならびに関連病院で小児科研修を始めた皆様。大学院で勉強しませんか。
臨床医としてスタートしてしばらくは、全てが新しく、未知の領域であり、一つ一つを教わり自分のものにするだけでせい一杯かと思います。
一方で、一通りの技術を習得するのにそれほどの時間はかからないかと思います。自分自身のことを思い出しましても、1、2年もすると一人前の小児科医になったつもりで、怖いもの知らずになった時期もありました。何でもわかったような、勘違いの日々がありました。それは、小児医療を技術として習得しても、医学に関してはほとんど無知のままだったせいかと思います。
私が30年前に学んだ小児医療と、現在の小児医療の内容はかなり異なります。それは、小児医学の進歩や医療技術の改良に伴うものです。今皆さんが学んでいることも、それだけではいつか古くなり、そのままでは役に立たなくなります。
皆さんには、常に新しい小児医学を学び、できれば自分たちで先頭に立ってこれからの小児医学を創りあげて頂きたいと思います。そのためには、医学を科学として捉えるための訓練と知識、基礎体力が是非とも必要になります。
大学院に入学する直接の目的は、医学博士というタイトルを取得するためです。一方で、その過程で得られる果実は一枚の紙切れ以上の大きなものがあります。それは、目の前の子ども達が抱えている問題について、少し距離を置いて考える訓練を行うことです。課題を整理して、そこから何かを見出して、誰もが納得する形で提示するという、大変な努力を必要とする作業の中から生まれてくる成果が、physician –scientistとしての基礎体力です。
臨床医が医学研究を行うことは、時間的制約が多く大変です。しかし、実際に患児を見ているものにしか決してわからない視点があり、それをことばにする作業はとても挑戦的で楽しくもあります。医療を、特に小児医療をArtで終わらせないでScienceに高めて維持するためには、いつの時代も若い皆さんの参加が必要です。一緒に勉強しませんか。

