シャアビ chaabi (二つ目の a
の上に曲アクセント)はアルジェリアの首都アルジェのカスバで誕生した歌謡ジャンルです。Chaabiとはアラブ語で「民衆の」を意味します。それまでの
音楽の流れを革新してこのジャンルを確立したのはムハメド・エル=アンカ M'hamed El Anka (1907-1978)です。
シャアビは伝統楽器に加えてマンドル、バンジョー、ピアノ、ギターなどを取り入れていき、都会的音楽として成長していきます。基本的にシャアビは男性感覚
のもので、狭義のシャアビには女性歌手は存在しません。
このジャンルを一層モダン化し、フランスのアルジェリア移民層に広めたのがダフマン・エル=ハラシ Dahmane El Harrachi
(1925-1980)でした。アルジェの大モスクの朗誦係の息子に生まれた彼はシャアビを愛してミュージシャンとなり、フランスに渡って成功を得てから
はほとんど故国に戻らず活動を続けました。
ダフマンの『ヤー・ライヤー』YaRayahは、国を離れていく者がいつかまたこの地に戻ってくるさ、と哀愁をこめて歌われた移民の歌として名高いもので
す。90年代にラシード・タハがカバーして若い世代にも知られるようになり、アラブ移民のテーマソングのようになっています。
ダフマンの歌の多くはアルジェリアの伝統的な知恵やアドバイスを歌ったもので、異国で働くうちに同国人の連帯を信じて裏切られ傷ついていく移民労働者たち
の心をこの上なく癒す音楽でした。
彼の没後、一時衰退をうわさされながら、ハシュミ・ゲルアビ、カメル・メサウディ、ダフマンの息子のカメル・エル=ハラシなどの手によってシャアビの伝統
は伝えられています。いま世界的に紹介され、最近ようやく日本でも愛好者が増え始めました。 08.05.06.